新生児TSS様発疹症(NTED)
患者年齢:0歳0カ月
家族歴、妊娠・分娩歴、既往歴:母は0妊0産
診断名:新生児TSS様発疹症(NTED)
症例要約
(主訴)発熱、発疹、活気低下
(現病歴)2008/1/5、在胎39週1日、自然分娩にて出生。体重2772g、Apgar score 1分値9点。PROM 18時間。生後6時間後よりチアノーゼが出現したため日齢1、精査目的にて前医入院。日齢3になり発熱出現。右耳周囲より滲出液も認めNTEDを疑われた。その後も発熱持続し活気も低下。日齢4、血液検査にて白血球減少、血小板減少を認めたため重症感染症の可能性もあり1/9当院紹介入院となった。
(入院時診察所見)活気不良、皮膚色黄、全身に発疹散在、滲出液は認めず。大泉門膨隆なし、肺野清、心雑音なし、筋緊張低下なし、外表奇形なし。
にきびMED
(検査結果)末梢血・生化学:WBC 2700 RBC 528万 Hb 18.6 Plt 5.5万 Alb 2.8 TB 15.83 DB 0.97 GOT 18 GPT 5 BUN 22.0 Cr 0.77 CRP 2.56 AT3 8.6 D-D 3.88 髄液検査:細胞数5/3 Xp;異常なし 超音波検査;心臓は奇形なし、収縮良好。頭部は明らかな出血はなし。腹部にも異常所見認めず。培養:皮膚、便、耳漏、鼻腔、咽頭よりMRSA検出。血液培養、髄液培養は陰性。
(鑑別診断)敗血症、髄膜炎、ウイルス感染症
犬の嘔吐
(経過)症状、経過より敗血症の可能性(MRSA原因の可能性大)、DICとなる可能性を考慮し治療開始。父へも重症感染症の可能性あり、集中治療が必要である旨を説明した。ユナシンS 150mg/kg/day、ファーストシン100mg/kg/day、ゾビラックス20mg/kg/回×2、プロジフ10mg/kg×1 3日間、γ-グロブリン500mg×3日間、FOY 2mg/kg/h、アンスロビン 250単位、補液は水分量 125ml/kg/day、Glc6.4mg/kg/h、カルチコール3.7ml/kg/dayにて開始。治療開始後、発熱認めず活気は改善。日齢5、活気良く啼泣激しい。経口哺乳10mlより開始。哺乳良好にて同日ミルク量20mlに増量し補液を漸減。また前医よりMRSA(+)との報告あり、ユナシンを中止しバンコマイシン10mg/kg/回DIV×2開始。その後も活気良好、経口哺乳良好。日齢6よりFOY漸減し日齢9には中止。日齢7、ファーストシン、ゾビラックス中止。血小板数は日齢8までは5万前後で推移していたが、日齢9に16.
一般的な関節痛や炎症9万と上昇し、以後血小板減少は認めず。日齢9、バンコマイシン中止、補液中止。1/16(日齢11)、全身状態良好にて前医へ転院となった。
(患児・家族への指導、考察)NTEDは黄色ブドウ球菌が産生する外毒素TSST-1が主な原因と考えられており、一般的には予後良好で後遺症などはほとんど見られない疾患である。本症例では、経過中に白血球減少、血小板減少を認め他の重症感染症も想定して治療を行なったが、入院後は速やかに症状改善傾向となり経過は極めて良好であった。当院退院後はしばらく前医にて経過観察をしてもらうが、基本的には予後には問題ないであろうと両親に説明した。
※この症例の思い出
NTED:Neonatal Toxic-shock like syndrome Exanthematous Disease
は実はこの症例の後も何例か経験しています。
全て他院出生の正期産児です。
※他院出生児が入院してきたらMRSAに要注意!
というのはNICUに勤務しているドクターには常識ですよね。
極低出生体重児の中には確かに敗血症を呈する症例も
あるようなのですが、検査所見上汎血球減少様の所見を
呈しても、症状は意外にも軽微で、時間経過とともに
自然軽快していく症例が多いという印象です。
この症例も、入院当初はぐったりして活気もなく、
重症感がありましたが、治療開始後すぐに症状の
改善がみられました。
ただ、入院当初からNTEDだと決めつけて、
他の鑑別診断を完全に除外して治療することは
実際上できませんので、治療開始段階では
敗血症を想定した治療に準ずることになるかと思います。
記事作成日:2011年2月23日
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